VRAM 12GBでComfyUIはどこまで動くか — 「足りない」には2種類ある

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「VRAMが足りない」と一言で言いますが、実際にはまったく別の壁が2つあります。この2つを混ぜて考えていると、お金をかけても解決しません。

VRAM 12GB(RTX 4070)で実際にAIアニメの制作を回している環境から、それぞれの実際を書きます。

壁① モデルが載らない — これは引き算で決まる

まず、こちらは単純です。モデルのファイルサイズがVRAMを超えていたら載りません。

手元にある動画・画像生成モデルの実サイズを並べます。VRAM 12GBと比べてみてください。

モデル 実サイズ 12GBに載るか
WAN 2.1 VACE 14B fp16 33 GB 論外
WAN 2.2 Animate 14B fp8 18 GB 載らない
WAN 2.2 i2v 14B fp8(high/low 各) 14 GB 載らない
WAN 2.2 fun camera 14B fp8 15 GB 載らない
FLUX.2 dev Q3_K_M(GGUF) 15 GB 載らない
WAN 2.2 ti2v 5B fp16 9.4 GB ぎりぎり
FLUX.1 dev Q5_K_S(GGUF) 7.8 GB 載る
WAN 2.2 TI2V 5B Q5_K_M(GGUF) 3.6 GB 余裕

ここで分かるのは、14B級のモデルはfp8まで落としても14〜15GBあるということです。12GBのVRAMには物理的に入りません。「設定を工夫すれば」の話ではなく、引き算の問題です。

一方で、5Bモデルを量子化(GGUF)すれば3.6GBまで下がります。これなら余裕を持って動きます。

つまり12GB環境の現実的な着地点は「14B → 5B + 量子化」です。

量子化して画質はどうなるか

筆者の体感では、通常版とGGUF版で品質の差はほとんど感じません。少なくとも「量子化したせいで作品として使えなくなった」という経験はありません。

「量子化=品質を捨てる妥協」という理解は、実際に使ってみると当たっていないと思います。VRAMが足りない環境では、迷わず第一選択にしていいはずです。

なお、量子化しても読み込みの待ち時間は減りません。ここを勘違いすると、まったく別の場所を疑うことになります(前の記事で実測しました)。

壁② 解像度を上げると走らない — これは買っても解決しない

問題はこちらです。

フルHD(1920×1080)で出力しようとすると、途端に走らなくなります。 そのため実運用では、1280×720(HD)で生成する前提で組むことになります。

そして重要なのは、これはスペックの高いPCでも同じように起きるということです。筆者はVRAM 96GBの環境も使えますが、それでもフルHDを直接出す前提では組んでいません。

「VRAMを積めば高解像度で出せるようになる」というのは、少なくとも動画生成では成り立ちません。モデルには学習された解像度があり、そこから外れると素直に出てくれないからです。VRAMは前提条件のひとつではありますが、それだけの問題ではありません。

だからHDで出して、後から上げる

実務としての結論はシンプルです。

1280×720で出す → アップスケールで必要な解像度まで上げる

この工程は、HDで出す以上どうしても必要になります。「アップスケールは仕上げの贅沢」ではなく、必須の工程として最初から見込んでおくべきです。

(どのアップスケーラをどう使い分けるかは、まだ十分な回数を試せていないので、断定できる段階になったら別記事にします。実測できていないことは書きません。)

もうひとつ:並列処理はできない

ローカルで回すとき、生成を並列に走らせることはできません。1本ずつ順番に流すことになります。

これは制作スケジュールに直接効いてきます。「32カット作る」なら、それは1本の生成時間×32の時間がかかるということです。ここを見誤ると、納期の見積もりを外します。

買う前に、どちらの壁か確かめる

整理します。

壁① モデルが載らない 壁② 解像度が上がらない
症状 ロードで落ちる/そもそも起動しない 動くには動くが実用にならない
原因 ファイルサイズ > VRAM 生成解像度に応じてVRAMを食う/モデルの学習解像度
対処 モデルを小さく(14B→5B・量子化) 解像度を下げてアップスケール
GPUを買えば解決するか する しない

壁②を壁①だと思ってGPUを買っても、フルHDが直接出せるようにはなりません。 ここは正直に書いておきます。

逆に、14B級のモデルをどうしても使いたいのであれば、それはVRAM容量の問題なので、GPUを増やせば素直に解決します。目安として、14B fp8を扱うならVRAM 16GB以上は見ておきたいところです。

そしてもうひとつ、「生成が始まるまでが遅い」場合は、そもそもVRAMの問題ですらありません。モデルを置いているドライブの読み込み速度が原因のことがあります。こちらは実測で12倍の差が出ました。

→ Cドライブが満杯でComfyUIのモデルを外付けHDDに逃がしたら、生成が12倍遅くなった話

まとめ


もし、いま12GBで詰まっているという方がいらっしゃったら。

まず「どちらの壁か」を確かめてみてください。 起動しないのか、生成が遅いのか。原因が違えば、買うべきものも変わります。

そして——GPUを買い替える前に、モデルの置き場所を確認してみてください。 そこだけで解決することが、実際にあります。

→ モデルを外付けHDDに逃がしたら、生成が12倍遅くなった話 - 壁②にGPUを買っても解決しない