正直に書きますが、私はアニメに詳しくありません。
映画が専門で、好きな漫画は『ジョジョの奇妙な冒険』や『はじめの一歩』です。劇画的なものが好きで、いわゆるアニメっぽいアニメは、そんなに得意ではありませんでした。
そんな人間が、AIアニメを29話作ることになりました。
何を見ればいいのか分からなかった
まず「アニメを理解しないと始まらない」と思いました。ただ、何を見ればいいのか分からない。
京都アニメーションが凄いらしい、という話は聞いていたので、『響け!ユーフォニアム』と『けいおん!』を見ることにしました。
『響け!ユーフォニアム』は、参考にならなかった
先に断っておくと、悪い意味ではありません。
見て驚いたのは、実写的な演出が多いことでした。映画的なカメラワーク、レンズ感。被写界深度の使い方まで実写の文法に見えました。
正直な感想はこうです。
「これはアニメなのか? 実写に近いぞ」
そして困りました。私はもともとそちら側の人間なので、参考にする対象として遠いんです。「なるほど、映画的にやればいいのか」では、アニメを作る手がかりになりません。
理解が追いつかないまま、次に進みました。
『けいおん!』で、分かった
私はああいうアニメが好きなタイプではありません。 それなのに、非常に感動しました。
何に感動したのか、最初はうまく言葉にできませんでした。少し考えて、こういうことだと思いました。
コストを抑えながら、キャラクターの魅力を最大限に引き出している。
アニメーションのコストパフォーマンスが、異常に高い。派手に動かしているわけではないのに、キャラクターが魅力的に見える。
その仕掛けが、これでした。
目と、髪が動く
キャラクターが喋るとき、ちょっとした動作をするとき——目と髪の毛が動きます。
大きなアクションではありません。まばたき、視線の移動、髪がふわっと揺れる。それだけです。
でもそこに目がいく。そして魅力的に見える。
これで思い当たったことがあります。
イヤリングのように、顔の周りに動くものがあると、人は顔を見やすくなります。 胸元のペンダントも同じで、視線を顔の方へ誘導する効果があります。
同じことを、アニメーションでやっている。
「顔を見てほしい」という設計が、髪と目の動きに落とし込まれている。だからキャラクターが生きて見える。
だから、プロンプトに書くようになった
ここからが実践です。
AI動画を生成するとき、可能な限りこの3つを指示に入れるようにしました。
- 髪の毛を動かす
- 目を動かす
- 表情を動かす
効果ははっきりあります。キャラクターが可愛くなるというか、魅力的になる。
ただしモデルによって精度がかなり変わります。素直に反映してくれるモデルと、無視するモデルがあるので、ここは試すしかありません。
具体例:一言のセリフでも変わる
たとえば、キャラクターが一言だけ喋るカットがあるとします。
そのまま喋らせるのと、
「最初に目を閉じ、大きく開いて、髪が動いてから喋る」
——これを指定するのとでは、まったく違うものが出てきます。後者は、たった一言のカットが「芝居」になります。
なぜ気づけたのか
これは自分でも面白いと思っているのですが、2作品を見た順序と、自分が映画畑だったことが効いています。
『響け!ユーフォニアム』が映画的だったので、私はそこにアニメ的な魅力づけを感じませんでした。自分の慣れた文法だったからです。
その直後に『けいおん!』を見たので、落差で気づけた。
「あ、こっちは全然違うことをやっている」と。
もし『けいおん!』だけを見ていたら、たぶん「よくできたアニメだな」で終わっていました。分からないものを2つ並べて、その差を見たから、方法が見えたんだと思います。
私がアニメを面白いと思った瞬間
そして、これが一番大きかったことです。
『けいおん!』を見て感じたのは、「ものすごく、キャラクターに対しての愛情があるな」ということでした。
コストの制約がある中で、どうすればこのキャラクターを魅力的に見せられるか。それを考え抜いた結果が、目と髪の動きだった。
そこで初めて、私はアニメを面白いと思いました。
作品が好きになった、という話ではありません。視線をどう誘導するか。命のないキャラクターに、どうやって命を吹き込むか。 その方法が見えたことが、面白かった。
まとめ
- AI動画のプロンプトには「髪を動かす」「目を動かす」「表情を動かす」を入れる
- 理由は、顔の周りに動くものがあると、人は顔を見るから(イヤリングやペンダントと同じ効果)
- 一言のセリフでも、目を閉じて開いて髪が動いてから喋ると、まったく別物になる
- ただしモデルによって精度が変わる
- 自分の得意な文法に近い作品からは、学べないことがある。落差のある2つを見ると見つかる
アニメに詳しくない人間がアニメを作ることになった話ですが、詳しくなかったからこそ気づけたこともありました。
もし、AIでアニメを作っている方がいたら
最後に、2つだけ。
① プロンプトを、よかったら真似してみてください
「髪を動かす」「目を動かす」「表情を動かす」。
この3つを、そのまま入れてみてください。たった数語ですが、出てくるものが変わると思います。うまくいかなければ、モデルを変えて試してみてください。そこは精度の差が大きい部分です。
② よかったら、『けいおん!』を見てみてください
私は「アニメを勉強しよう」と思って見ました。でも、そんな見方をしなくても、十分に面白い作品です。
そのうえで、キャラクターがどう動かされているか——髪、目、表情、間——を意識して見ていただけると、何か見つかるかもしれません。
私はそれで、仕事のやり方が変わりました。
同じことが、どなたかの役に立てば嬉しいです。
