企業の紹介映像は、これからAIで作られると思う

AI映像がいちばん効くのはどこか、と聞かれたら。

私は 企業向けの映像 だと答えます。

商品紹介、会社紹介、サービス説明、社内向けの研修動画。これから需要が伸びるのは、この領域だと思っています。

先に結論

そもそも「社内映像」をご存じでしょうか

先に、あまり表に出てこない領域の話をさせてください。

社内研修用の映像。社内規定の説明映像。 ——社外には出ない、社内だけで使われる映像です。

こういうものは、実際にたくさん作られています。そして多くの場合、研修部や総務の担当者が、自分で映像に出ることになります。

そこで、何が起きているか

ここに、けっこう深刻な問題があります。

① 人が辞めると、映像が使えなくなる

出演していた社員が退職する。それだけで、その映像は使いづらくなります。中身は何も間違っていないのに、です。

② 規定が変わると、撮り直しになる

社内規定の変更。制度の改定。 一度撮影した内容の差し替えが発生します。

③ 失敗すれば、また人を集める

撮り直しになれば、また人を集めて、また時間を取ることになります。本業を止めて、です。

④ そして——そもそも、出たくない

これが一番大きいと思います。

社内の映像に、出たくない。

当然だと思います。慣れていないし、恥ずかしいし、そもそも本業ではありません。

だから何が起きるか。

この作業が、たらい回しにされます。 そして最終的に、新人に無理やりやらせる——ということが、実際に起きています。

けっこう横行しているんです。

ちなみに、いくらかかっているか

社内映像は、わりと簡単なプレゼンテーション動画の収録であることが多いです。

それでも——1本あたり8万〜10万円ほどを発注に払っている企業は、少なくないのではないでしょうか。

「簡単な映像」でも、人が動けば、そうなります。 そして先ほど書いた通り、規定が変わればまた作り直しです。

だから、AIが効きます

ここまで書けば、もう明らかだと思います。

社内映像の問題 AIで作った場合
出演者が退職すると使えなくなる そもそも人が出ていないので、影響しない
規定変更で撮り直し 該当箇所だけ差し替えればいい
失敗すると人を再招集 やり直しても、人は動かない
誰も出たくない/新人に押し付けられる 誰も出なくていい

④が、特に大きいと思っています。

コストの話ではありません。誰かに嫌なことをさせなくて済む、という話です。押し付けられた側の負担が、そもそも発生しない。

実際に、こういうものを作っています

言葉だけだと伝わりにくいので、実物を置いておきます。AIアバターで作った社内研修映像です。

AIアバターを使った社内研修映像。規定が変わっても、該当箇所だけ差し替えられます。

誰も出演していません。 それでも、伝えるべきことは伝わります。

肖像権のことも、あります

もうひとつ、見落とされがちなことがあります。

社内の人の肖像権です。

一度映像に出てしまうと、次もまた出されることになりがちです。「前にも出てもらったから」と、自然とそうなっていきます。

そしてもうひとつ。自分が出た映像が、いつ、どこで、どう使われているのか——本人には、意外と分からないものです。想定していなかった場所で使われている可能性もあります。

自分という個人の情報が、どう扱われているのか。

そこに不安を感じる方は、決して少なくないと思います。

簡単な社内プレゼンの映像かもしれません。でも、映っているのは人です。

AIアバターなら——変更や対応に多くの人間を割かず、社内の人の肖像権も守りながら作れます。

誰も傷つかない。

これが、まずAIを社内映像に使うべき理由だと思っています。

私は、こういう現場をずっと見てきました

映像業界に携わっていると、こういう連鎖に何度も出会います。

出たくない人が、出される。

その人が、辞める。

映像が、撮り直しになる。

そして規定が変わって、また撮り直しになる。

——実際に、あります。

一つひとつは小さなことに見えますが、繋がると、けっこうな量の仕事と負担になります。しかもそのたびに、誰かが「出る人」を探すことになる。

これらは——AIアバターに置き換えるだけで、ほとんど解決します。

そして、社内の承認が軽くなる

もうひとつ、地味ですが大きいことがあります。

社内の承認が、非常に簡便になります。

実写だと、こうなります。

AIアバターなら、この工程がほとんど消えます。 承認するのは、内容だけでよくなるからです。

「誰が出るか」を決めなくていい。 これは、思っている以上に大きいと思います。社内映像がなかなか進まない原因の多くは、内容ではなく、ここにあるからです。


社内以外の映像も、置き換えていくと

そして、社内に限らず——商品紹介、サービス説明、会社案内。社外向けの映像もAIに置き換えていくと、さらに大きなことが起きます。

撮影の日数そのものが、消えるんです。

いちばん大きいのは、撮影が要らなくなること

商品の全体図と資料があれば、映像はAIで構成できます。ナレーション映像も、アバターで対応できます。

ここで大事なのは、「AIが安いから」ではないということです。

人とモノが、動かなくなるからです。

撮影日を1日押さえると、何が動くか

書き出してみます。

これが一斉に動きます。

しかも、日程を合わせるだけでも一苦労です。全員のスケジュールを押さえ、会場を押さえ、機材を押さえる。どれか1つが崩れると、組み直しになります。

その一日まるごとが、PCの前の数十分に置き換わることがある。

動く人とモノが減るから、お金も時間も軽くなる。これがコストが下がる本当の理由です。

浮いたぶんを、どこに回すか

そして、ここが大事だと思っています。

撮影のコストが減った。では、そのぶんをどこに使うか。

私は、AI映像のクオリティと、変更対応に回すべきだと思っています。

そうすると——修正や要望に、はるかに柔軟に応えられるようになります。

「安くなりました」で終わらせるのは、もったいない。浮いたぶんで、対応の質を上げる。 そのほうが、結局は長く使ってもらえる映像になります。

もう一つは、「追撮」が要らないこと

実務ではこちらも同じくらい大きい。修正コストです。

企業向けの映像には、規約・制度・価格・サービス内容が入ります。そして、これらは変わります。

AIで作っていれば、該当箇所だけ差し替えれば済みます。

追撮が要りません。

(現場では「再撮影」ではなく 追加撮影=追撮(ついさつ) と言います。以下、この言葉で書きます。)

たとえば、雨が降っただけで

追撮がどれだけ重いか、具体的に書きます。

屋外での撮影を想定していた。でも、雨が降った。

そこから、こうなります。

スケジュールがずれる

↓

スタジオやロケ場所を、もう一度押さえ直す

↓

予算が、追加でかかる

↓

その追加予算の、承認を取らなければいけない

↓

「なんでそんな企画を出したんだ」と、責められる人が生まれる

ありとあらゆる苦労が、ここから出てきます。

天気は、誰のせいでもありません。 それでも、誰かが責任を取ることになる。

AIで作っていれば、この連鎖は起きません。

実写の修正も、AIでできます

もうひとつ。すでに撮ってしまった実写に対する修正も、AIでできることが増えました。

たとえば、こういう相談を受けます。

「この写真、1枚しかないんだけど——この人を動かすことってできる?」

——できます。

「じゃあ、それ以外も全部AIでやって」

——これも、できます。

追撮に行く前に、手元にある素材で何とかできないかを考える。 この選択肢が増えたことは、けっこう大きいと思っています。

実際にあった、音の事故の話

まったく違うパターンの話も書かせてください。AIが「作るもの」ではなく「救うもの」になったケースです。

ある配信で、音の信号が混線しました。

BGMとセリフが同じ信号に乗ってしまい、しかもBGMがめちゃくちゃ大きい。 セリフが、まともに取れていません。

どんなに修正しても、聞ける状態になりませんでした。

8秒だけ、きれいな音が残っていた

そこで見つけたのが、8秒間だけ、きれいに録れていた音声でした。

その8秒を使って——ボイスクローンを作りました。

そして私が喋り、その声に置き換えた。

これで、OKが出ました。 けっこうな大企業の案件です。

AIは「作るもの」だけではありません

この話で伝えたいのは、こういうことです。

AIを、最初から「駄目だ」と思わないでほしい。

どう使えるのかを知ったうえで、企業の方と一緒に考えられると——思ってもいなかった使い方が、たくさん出てきます。

新しく作るためだけの道具ではありません。 もう駄目だと思ったものを、救うためにも使えます。

そして、こういう引き出しは——一緒に考えないと出てきません。 「AIでやりましょう」でも「AIは駄目です」でもなく、目の前の困りごとに対して、使えるものを探す。それだけの話だと思っています。

「覆し」は、日常的に起きます

正直に書きます。45万円クラスの案件でも、覆しは日常的に起きます。

理由はさまざまです。

そして重要なのは——覆しは、制作者の実力不足で起きるわけではないということです。

ここを誤解すると、必要以上に消耗します。自分の作りが悪かったのかと考えてしまう。でも、そもそも決定が動いただけであることが多いんです。

だからこそ、差し替えがしやすいこと自体が、価値になります。

実写で作っていたら「もう一度スタジオを押さえましょう」になる修正が、該当カットの作り直しだけで済む。これは発注側にとっても、受注側にとっても大きい。

実写のほうがいい場面も、はっきりあります

念のため書いておきます。何でもAIにすべきだとは思っていません。

こういうものは、実写のほうが確実に強い。「本当にある」ということ自体が価値だからです。

ただ、「人が話している映像」の形そのものは、AIでも作れます。これは採用インタビューの構成で作ったものです。

採用インタビュー動画の冒頭30秒(カリキュラム演習作品)

形は作れる。でも「その人である必要があるか」は別の判断です。 そこを混同しないほうがいいと思っています。

逆に言えば——そうでないものは、かなりAIで足ります。

このあたりは、内容が正確に伝わることが最優先です。ここに撮影費と日程調整をかけるのは、正直もったいない。

商品紹介なら、ここまでできます

架空のプロダクトで作った、ローンチ・商品紹介の映像です。撮影はしていません。

架空プロダクトの商品紹介映像
同じ商品で、別バージョン

同じ商品で、別バージョンを作るのも簡単です。 実写だと、これがそのまま「もう一度撮影」になります。

難しいのは、実は「台本」です

そして、ここからが本題かもしれません。

AIで映像を作るとき、一番時間がかかるのは、生成ではありません。

何を、どの順番で言うかを決めることです。

商品の魅力を並べただけでは、映像になりません。

ここが決まっていないまま生成を始めると、素材だけが増えて、まとまらないということが起きます。逆に、台本さえ決まっていれば、生成そのものは驚くほど早い。

だから私は、AI映像の仕事は、台本づくりが8割だと思っています。

実際にこの順で作ったものを置いておきます。自社ツール「Writer's Window」の製品デモ映像です。企画から台本、映像制作までを一本のパイプラインに通しました。

自社ツール「Writer's Window」の製品デモ。企画・台本・映像制作を一つのパイプラインに通して作りました

紹介する商品が自社のものでも、他社のものでも、通る道は同じです。何を、どの順番で言うか。そこさえ決まっていれば、あとは流れます。

そこで作ったのが「AKINAI SCRIPT」です

これまで、多数の企業映像を担当してきました。そこで溜まったナレッジを、ひとつのAIソフトウェアとしてまとめたものが、AKINAI SCRIPT(商い台本)です。

商品のデータや、社内にある製品情報を入れていただくと——特定のフォーマットに沿って、商品を紹介する台本を組み立てます。

無料で公開しているので、よかったら使ってみてください。

そして、発注する側にこそ使ってほしい

もうひとつ、こういう使い方を提案させてください。

社外に映像を発注するときの話です。

——これは、本当によくあることだと思います。

そんなときに、まず AKINAI SCRIPT で台本を出してみてください。

そして、その台本を持って制作会社に相談する。

「こういう映像を作りたいんです」 と、形のあるものを渡せます。

受け答えが、はるかにスムーズになるはずです。

そして正直に言えば——何を作りたいのか分かっている発注は、受ける側としても本当にありがたいんです。 打ち合わせが、探り合いではなく相談になります。

映像が「作れるもの」になってきた

いま、AI映像は急速に民主化しています。 誰でも使えるものになってきた。

そうなると——これまで「うちは映像なんて作れない」と思っていた企業でも、映像が必要になるし、作りやすくもなる。 そういう時代だと思っています。

でも、そこで困る人が出てきます。

「作りたい。でも、作れない。何をどうすればいいのか分からない」

この方たちが本当に欲しいのは、たぶん——「正確に発注したい」ということなんです。

そのために考えたのが、AKINAI SCRIPT です。

どこに頼んでいただいても構いません

大手企業だけの話ではありません。いろいろな規模の企業の方に、使っていただけたらと思っています。

自分たちで映像を作るのでもいい。 誰かに依頼するのでもいい。

——うちにご相談いただいてもいいのですが、そうでなくても、まったく構いません。

「何を作りたいか」がはっきりしていれば、どこに頼んでも、いい映像になります。

そのために使っていただけたら、それが一番嬉しいです。

まとめ

映像制作の相場は、動く人とモノの量で決まってきました。AIはそこを変えます。だからこそ、残る仕事は「何を言うか」を決めるところに寄っていくのだと思います。


なお、AIが「安くできる口実」として使われた話は、別の記事に書いています。AI原稿を120ページ渡されて「これを本にしてください」と言われたときの顛末です。

→ 「これを本にして」とAI原稿120ページを渡された話