AI映像がいちばん効くのはどこか、と聞かれたら。
私は 企業向けの映像 だと答えます。
商品紹介、会社紹介、サービス説明、社内向けの研修動画。これから需要が伸びるのは、この領域だと思っています。
先に結論
- 社内研修・社内規定の映像には、表に出にくい問題がある (出演者の退職/規定変更での撮り直し/そして「誰も出たくない」)
- 簡単なプレゼン動画でも、1本8万〜10万円を払っている企業は少なくない
- AIアバターにすると「誰が出るか」を決めなくてよくなり、社内の承認が一気に軽くなる
- そして社内の人の肖像権を守れる。誰も傷つかない
- AIが効く理由は「安いから」ではなく、人とモノが動かなくなるから
- 撮影日を1日押さえると、6種類のものが一斉に動く。それが消える
- そして修正が安い。規約や制度が変わっても、追撮(追加撮影)が要らない
- 企業案件では 「覆し」が日常的に起きる。だから差し替えの安さ自体が価値になる
そもそも「社内映像」をご存じでしょうか
先に、あまり表に出てこない領域の話をさせてください。
社内研修用の映像。社内規定の説明映像。 ——社外には出ない、社内だけで使われる映像です。
こういうものは、実際にたくさん作られています。そして多くの場合、研修部や総務の担当者が、自分で映像に出ることになります。
そこで、何が起きているか
ここに、けっこう深刻な問題があります。
① 人が辞めると、映像が使えなくなる
出演していた社員が退職する。それだけで、その映像は使いづらくなります。中身は何も間違っていないのに、です。
② 規定が変わると、撮り直しになる
社内規定の変更。制度の改定。 一度撮影した内容の差し替えが発生します。
③ 失敗すれば、また人を集める
撮り直しになれば、また人を集めて、また時間を取ることになります。本業を止めて、です。
④ そして——そもそも、出たくない
これが一番大きいと思います。
社内の映像に、出たくない。
当然だと思います。慣れていないし、恥ずかしいし、そもそも本業ではありません。
だから何が起きるか。
この作業が、たらい回しにされます。 そして最終的に、新人に無理やりやらせる——ということが、実際に起きています。
けっこう横行しているんです。
ちなみに、いくらかかっているか
社内映像は、わりと簡単なプレゼンテーション動画の収録であることが多いです。
それでも——1本あたり8万〜10万円ほどを発注に払っている企業は、少なくないのではないでしょうか。
「簡単な映像」でも、人が動けば、そうなります。 そして先ほど書いた通り、規定が変わればまた作り直しです。

だから、AIが効きます
ここまで書けば、もう明らかだと思います。
| 社内映像の問題 | AIで作った場合 |
|---|---|
| 出演者が退職すると使えなくなる | そもそも人が出ていないので、影響しない |
| 規定変更で撮り直し | 該当箇所だけ差し替えればいい |
| 失敗すると人を再招集 | やり直しても、人は動かない |
| 誰も出たくない/新人に押し付けられる | 誰も出なくていい |
④が、特に大きいと思っています。
コストの話ではありません。誰かに嫌なことをさせなくて済む、という話です。押し付けられた側の負担が、そもそも発生しない。
実際に、こういうものを作っています
言葉だけだと伝わりにくいので、実物を置いておきます。AIアバターで作った社内研修映像です。
誰も出演していません。 それでも、伝えるべきことは伝わります。
肖像権のことも、あります
もうひとつ、見落とされがちなことがあります。
社内の人の肖像権です。
一度映像に出てしまうと、次もまた出されることになりがちです。「前にも出てもらったから」と、自然とそうなっていきます。
そしてもうひとつ。自分が出た映像が、いつ、どこで、どう使われているのか——本人には、意外と分からないものです。想定していなかった場所で使われている可能性もあります。
自分という個人の情報が、どう扱われているのか。
そこに不安を感じる方は、決して少なくないと思います。
簡単な社内プレゼンの映像かもしれません。でも、映っているのは人です。
AIアバターなら——変更や対応に多くの人間を割かず、社内の人の肖像権も守りながら作れます。
誰も傷つかない。
これが、まずAIを社内映像に使うべき理由だと思っています。
私は、こういう現場をずっと見てきました
映像業界に携わっていると、こういう連鎖に何度も出会います。
出たくない人が、出される。
その人が、辞める。
映像が、撮り直しになる。
そして規定が変わって、また撮り直しになる。
——実際に、あります。
一つひとつは小さなことに見えますが、繋がると、けっこうな量の仕事と負担になります。しかもそのたびに、誰かが「出る人」を探すことになる。
これらは——AIアバターに置き換えるだけで、ほとんど解決します。
そして、社内の承認が軽くなる
もうひとつ、地味ですが大きいことがあります。
社内の承認が、非常に簡便になります。
実写だと、こうなります。
- 誰が出るかを決める(=そもそも調整が要る)
- その人の上長の許可を取る
- 撮影日を、全員のスケジュールで押さえる
- 撮り直しになれば、また同じことを最初から繰り返す
AIアバターなら、この工程がほとんど消えます。 承認するのは、内容だけでよくなるからです。
「誰が出るか」を決めなくていい。 これは、思っている以上に大きいと思います。社内映像がなかなか進まない原因の多くは、内容ではなく、ここにあるからです。
社内以外の映像も、置き換えていくと
そして、社内に限らず——商品紹介、サービス説明、会社案内。社外向けの映像もAIに置き換えていくと、さらに大きなことが起きます。
撮影の日数そのものが、消えるんです。
いちばん大きいのは、撮影が要らなくなること
商品の全体図と資料があれば、映像はAIで構成できます。ナレーション映像も、アバターで対応できます。
ここで大事なのは、「AIが安いから」ではないということです。
人とモノが、動かなくなるからです。
撮影日を1日押さえると、何が動くか
書き出してみます。
- カメラマン
- 照明スタッフ
- 会場
- 移動
- 機材レンタル
- お弁当
これが一斉に動きます。
しかも、日程を合わせるだけでも一苦労です。全員のスケジュールを押さえ、会場を押さえ、機材を押さえる。どれか1つが崩れると、組み直しになります。
その一日まるごとが、PCの前の数十分に置き換わることがある。
動く人とモノが減るから、お金も時間も軽くなる。これがコストが下がる本当の理由です。
浮いたぶんを、どこに回すか
そして、ここが大事だと思っています。
撮影のコストが減った。では、そのぶんをどこに使うか。
私は、AI映像のクオリティと、変更対応に回すべきだと思っています。
そうすると——修正や要望に、はるかに柔軟に応えられるようになります。
「安くなりました」で終わらせるのは、もったいない。浮いたぶんで、対応の質を上げる。 そのほうが、結局は長く使ってもらえる映像になります。
もう一つは、「追撮」が要らないこと
実務ではこちらも同じくらい大きい。修正コストです。
企業向けの映像には、規約・制度・価格・サービス内容が入ります。そして、これらは変わります。
AIで作っていれば、該当箇所だけ差し替えれば済みます。
追撮が要りません。
(現場では「再撮影」ではなく 追加撮影=追撮(ついさつ) と言います。以下、この言葉で書きます。)
たとえば、雨が降っただけで
追撮がどれだけ重いか、具体的に書きます。
屋外での撮影を想定していた。でも、雨が降った。
そこから、こうなります。
スケジュールがずれる
↓
スタジオやロケ場所を、もう一度押さえ直す
↓
予算が、追加でかかる
↓
その追加予算の、承認を取らなければいけない
↓
「なんでそんな企画を出したんだ」と、責められる人が生まれる
ありとあらゆる苦労が、ここから出てきます。
天気は、誰のせいでもありません。 それでも、誰かが責任を取ることになる。
AIで作っていれば、この連鎖は起きません。
実写の修正も、AIでできます
もうひとつ。すでに撮ってしまった実写に対する修正も、AIでできることが増えました。
たとえば、こういう相談を受けます。
「この写真、1枚しかないんだけど——この人を動かすことってできる?」
——できます。
「じゃあ、それ以外も全部AIでやって」
——これも、できます。
追撮に行く前に、手元にある素材で何とかできないかを考える。 この選択肢が増えたことは、けっこう大きいと思っています。
実際にあった、音の事故の話
まったく違うパターンの話も書かせてください。AIが「作るもの」ではなく「救うもの」になったケースです。
ある配信で、音の信号が混線しました。
BGMとセリフが同じ信号に乗ってしまい、しかもBGMがめちゃくちゃ大きい。 セリフが、まともに取れていません。
どんなに修正しても、聞ける状態になりませんでした。
8秒だけ、きれいな音が残っていた
そこで見つけたのが、8秒間だけ、きれいに録れていた音声でした。
その8秒を使って——ボイスクローンを作りました。
そして私が喋り、その声に置き換えた。
これで、OKが出ました。 けっこうな大企業の案件です。
AIは「作るもの」だけではありません
この話で伝えたいのは、こういうことです。
AIを、最初から「駄目だ」と思わないでほしい。
どう使えるのかを知ったうえで、企業の方と一緒に考えられると——思ってもいなかった使い方が、たくさん出てきます。
新しく作るためだけの道具ではありません。 もう駄目だと思ったものを、救うためにも使えます。
そして、こういう引き出しは——一緒に考えないと出てきません。 「AIでやりましょう」でも「AIは駄目です」でもなく、目の前の困りごとに対して、使えるものを探す。それだけの話だと思っています。
「覆し」は、日常的に起きます
正直に書きます。45万円クラスの案件でも、覆しは日常的に起きます。
理由はさまざまです。
- 先方の社内で決裁が変わった
- 上の方の好みが違った
- 世の中の流れが変わった
そして重要なのは——覆しは、制作者の実力不足で起きるわけではないということです。
ここを誤解すると、必要以上に消耗します。自分の作りが悪かったのかと考えてしまう。でも、そもそも決定が動いただけであることが多いんです。
だからこそ、差し替えがしやすいこと自体が、価値になります。
実写で作っていたら「もう一度スタジオを押さえましょう」になる修正が、該当カットの作り直しだけで済む。これは発注側にとっても、受注側にとっても大きい。
実写のほうがいい場面も、はっきりあります
念のため書いておきます。何でもAIにすべきだとは思っていません。
- 実在の社員や店舗を見せたいとき
- その場の空気や手つきを伝えたいとき
- 人の信頼で売るタイプの商材
こういうものは、実写のほうが確実に強い。「本当にある」ということ自体が価値だからです。
ただ、「人が話している映像」の形そのものは、AIでも作れます。これは採用インタビューの構成で作ったものです。
形は作れる。でも「その人である必要があるか」は別の判断です。 そこを混同しないほうがいいと思っています。
逆に言えば——そうでないものは、かなりAIで足ります。
- 商品のスペック説明
- サービスのフロー説明
- 制度や規約の解説
- 社内向けの手順動画
このあたりは、内容が正確に伝わることが最優先です。ここに撮影費と日程調整をかけるのは、正直もったいない。
商品紹介なら、ここまでできます
架空のプロダクトで作った、ローンチ・商品紹介の映像です。撮影はしていません。
同じ商品で、別バージョンを作るのも簡単です。 実写だと、これがそのまま「もう一度撮影」になります。
難しいのは、実は「台本」です
そして、ここからが本題かもしれません。
AIで映像を作るとき、一番時間がかかるのは、生成ではありません。
何を、どの順番で言うかを決めることです。
商品の魅力を並べただけでは、映像になりません。
- 誰に向けて話すのか
- 最初の数秒で何を見せるのか
- どこで結論を言うのか
- 何を捨てるのか
ここが決まっていないまま生成を始めると、素材だけが増えて、まとまらないということが起きます。逆に、台本さえ決まっていれば、生成そのものは驚くほど早い。
だから私は、AI映像の仕事は、台本づくりが8割だと思っています。
実際にこの順で作ったものを置いておきます。自社ツール「Writer's Window」の製品デモ映像です。企画から台本、映像制作までを一本のパイプラインに通しました。
紹介する商品が自社のものでも、他社のものでも、通る道は同じです。何を、どの順番で言うか。そこさえ決まっていれば、あとは流れます。
そこで作ったのが「AKINAI SCRIPT」です
これまで、多数の企業映像を担当してきました。そこで溜まったナレッジを、ひとつのAIソフトウェアとしてまとめたものが、AKINAI SCRIPT(商い台本)です。
商品のデータや、社内にある製品情報を入れていただくと——特定のフォーマットに沿って、商品を紹介する台本を組み立てます。
無料で公開しているので、よかったら使ってみてください。
そして、発注する側にこそ使ってほしい
もうひとつ、こういう使い方を提案させてください。
社外に映像を発注するときの話です。
- どんな動画が必要なのか、そもそも分からない
- どんな提案映像を求めているのか、自分たちでも言語化しにくい
——これは、本当によくあることだと思います。
そんなときに、まず AKINAI SCRIPT で台本を出してみてください。
そして、その台本を持って制作会社に相談する。
「こういう映像を作りたいんです」 と、形のあるものを渡せます。
受け答えが、はるかにスムーズになるはずです。
そして正直に言えば——何を作りたいのか分かっている発注は、受ける側としても本当にありがたいんです。 打ち合わせが、探り合いではなく相談になります。
映像が「作れるもの」になってきた
いま、AI映像は急速に民主化しています。 誰でも使えるものになってきた。
そうなると——これまで「うちは映像なんて作れない」と思っていた企業でも、映像が必要になるし、作りやすくもなる。 そういう時代だと思っています。
でも、そこで困る人が出てきます。
「作りたい。でも、作れない。何をどうすればいいのか分からない」
この方たちが本当に欲しいのは、たぶん——「正確に発注したい」ということなんです。
そのために考えたのが、AKINAI SCRIPT です。
どこに頼んでいただいても構いません
大手企業だけの話ではありません。いろいろな規模の企業の方に、使っていただけたらと思っています。
自分たちで映像を作るのでもいい。 誰かに依頼するのでもいい。
——うちにご相談いただいてもいいのですが、そうでなくても、まったく構いません。
「何を作りたいか」がはっきりしていれば、どこに頼んでも、いい映像になります。
そのために使っていただけたら、それが一番嬉しいです。
まとめ
- AI映像が効くのは企業向けの映像。需要はこれから伸びると思っている
- 社内映像には「出たくない」「辞めた人が映っている」「規定が変わった」という問題が常にある
- AIアバターなら、そのほとんどが起きない。しかも「誰が出るか」の調整と承認が消える
- 肖像権も守れる。誰も傷つかないことが、社内映像でAIを使う一番の理由
- 浮いたコストは値引きではなく、クオリティと変更対応に回す
- 効く理由は「安いから」ではなく、人とモノが動かなくなるから
- 撮影日を1日押さえると カメラマン/照明/会場/移動/機材/お弁当 が一斉に動く
- 追撮が要らない。雨ひとつで「スケジュール→再押さえ→追加予算→承認→誰かが責められる」の連鎖が起きる
- すでに撮った実写の修正も、いまはAIでできることが増えた(写真1枚から人を動かす、など)
- AIは「作るもの」だけではない。混線して聞けなくなった音声を、 残っていた8秒からボイスクローンを作って救ったことがある
- 最初から駄目と思わず、一緒に考えると、思ってもいない使い方が出てくる
- 覆しは日常。しかも制作者の実力不足で起きるわけではない
- ただし実在の人・店・空気を見せたいなら、実写のほうが確実に強い
- そして一番時間がかかるのは生成ではなく、台本
- そのナレッジをまとめたのが AKINAI SCRIPT(無料)
- 発注する側が「何を作りたいか」を言語化する道具としても使ってほしい
- AI映像は民主化している。「うちには作れない」と思っていた企業にも、映像が要る時代になる
- どこに頼んでも構いません。「何を作りたいか」がはっきりしていれば、いい映像になります
映像制作の相場は、動く人とモノの量で決まってきました。AIはそこを変えます。だからこそ、残る仕事は「何を言うか」を決めるところに寄っていくのだと思います。
なお、AIが「安くできる口実」として使われた話は、別の記事に書いています。AI原稿を120ページ渡されて「これを本にしてください」と言われたときの顛末です。
